株式会社 鈴木コーヒー (新潟県)

南国の恵みと北国の知恵、個人の想い…いくつもの物語が織りなす「雪室珈琲」

「鈴木コーヒー」は新潟県新潟市でコーヒー豆や関連商品の販売・店舗のプロデュースなどを行っている企業です。新潟市内・長岡市内に直営店も展開しており、大切な人と過ごす場を提供しています。

同社の「雪室珈琲」は、北国の知恵「雪室」で低温熟成させた雑味のないマイルドなコーヒー。すっきりとした味わいの奥には、ぎゅっと濃縮したようなさまざまな物語や想いがありました。

南国のコーヒーに北国の知恵を

物語の始まりは、同社代表の佐藤さんが帰郷してから一営業マンとして上越地区を回っていた2011年に遡ります。この頃に、上越青年会議所が雪室での商品保存に取り組んでいることを初めて知ったそうです。 

雪室は、雪を使った天然の冷蔵庫。自然かつ安定した温度・湿度のもと、食品の鮮度が保たれ味も熟成・向上します。新潟では古から一般的な自然を活かした知恵でした。

「雪室でコーヒーをやったらおもしろいんじゃない?」

そう言われたことがきっかけでした。

赤道直下・南国生まれのコーヒーに雪国・新潟の雪室を活用することで、新潟だけのものとすることができるのでは?と佐藤さんは直感。地域への貢献という意味でも活用できるとの気持ちもありました。

後のことですが、同社が重視するSDGsと雪室がつながるものだったとの気づきもありました。持続可能な方法でどう経済を回していくか。そのために自社はどう貢献できるのか。雪室は、それを解決できる方法でもあったのです。 

佐藤さんは雪室を使用した食材ブランド「越後雪室屋」を大学と連携し立ち上げます。味の研究の結果、雪室でコーヒーを低温熟成するとコーヒーの香り成分は残しつつ不快な雑味がなくなることがわかりました。味がマイルドに、美味しくなることが科学的に明らかになったのです。

コーヒーが苦手な人にも好きな人にも

雪室によりコーヒーはマイルドになるため、コーヒーが苦手という方から「雪室珈琲は飲める」という声をいただくそうです。ドリップタイプは飲みやすいので苦手な方にこそ飲んでみてほしいと話します。

リキッドタイプのアイスコーヒーはエスプレッソ抽出という特殊な抽出方法を採用しており、「本当に美味しいんですよ」と佐藤さんは話します。コーヒーが好きな方にはぜひアイスコーヒーを試していただきたいそうです。全国にリピーターのいる商品で、味も皆さんのお墨付きです。

そう、雪室珈琲は今や全国にファンが広がっています。関西在住の方から、直筆のお手紙をいただいたことがあるそうです。その方は実家が新潟ですが、お土産で雪室珈琲をいただいたそう。地元新潟のコーヒーだと知り、しかも新潟ならではの商品で美味しくいただけた、新潟を感じてほっこりした。その気持ちを伝えるためだけに手紙を送ってくれたといいます。

また、東京の知り合いから「美味しいコーヒー見つけたから送るよ!」と送られてきたのが雪室珈琲だったんです、と佐藤さんは笑いながら話してくれました。思わず笑ってしまいましたが、全国で味が認められている証です。

贈り物のエピソードをご紹介しましたが、ギフトのほか家庭でのちょっとした贅沢としても楽しんでほしいそうです。リキッドタイプもドリップタイプも、本格的なコーヒーを手軽に味わうことができます。

つながり合う物語

しかし実はここに至るまでは順風満帆ではありませんでした。まず、社内で受け入れられなかったのだそうです。

コーヒーは鮮度が命。わざわざ保管すると味が落ちる。そう言われ社内では見向きもされなかったそうです。それでも佐藤さんは片道3時間かけて一人雪室に通い、商品開発を続けます。孤独な戦いでした。

そもそもが全くのゼロからのスタート。ブレンドには「豆の種類・焙煎の度合い・熟成期間」の3つの要素が関わってきます。どの品種が雪室での熟成に合うか、焙煎の度合いはどう影響するか、熟成の期間を変えるとどうなるか…。1つひとつ手探りのように答えを見つけていく気の遠くなるような作業。開発だけで1年以上かかったといいます。

そして膨大な組み合わせを検証してついに商品は完成、発売を開始します。

しかし、初めは売れませんでした。

しかもそのころ佐藤さんは社内で厳しい立場にありました。佐藤さんの個人的な物語も雪室珈琲を織りなす大切な糸の1つです。

佐藤さんは帰郷する前、東京の大手同業社に営業職として勤務していました。

「めちゃめちゃ優秀だったんです。営業マンとして」

そう笑います。

戻ったばかりのころは、新潟のスローさが歯がゆかったと振り返ります。

「当時の社員からしたら大天狗でした。社長のせがれが来た、みたいな扱いですね。」

社内で受け入れられない日々が続きました。営業とマネジメントは別だと反省し、営業マンとして一からやり直すことに。同社にとって未開拓の地・会社からも離れた上越地区の担当となります。そこで雪室と出会ったのでした。

商品が完成してからも、孤軍奮闘のような状態。しかし佐藤さんが「兄貴分」と仰ぐ方が「この商品はおもしろいから、絶対やり続けろ」と応援してくれました。

「営業はできた」という佐藤さん。そこから、どんどん得意先を増やしていきます。さらに雪室珈琲を売るための戦略も当たり、売上もついていきました。

このころの挫折と失敗から、「人とのつながりを大切にしなくては」と優しい気持ちになれたといいます。佐藤さんの内面の変化と実績から、社内でも受け入れられるようになっていきました。

幸せをすべての人に

佐藤さんは、代表となってから経営理念を変えました。ふつうは起業時の理念を変えることはありません。しかし自身の失敗と挫折の反省から、どうしても加えたい内容がありました。

経営理念には、社員の幸せについて追加したそうです。これは、「もう絶対に同じ轍は踏まない」という佐藤さん自身への戒めだといいます。

まず社員が幸せでなくてはならない。佐藤さんはそう確信しています。鈴木コーヒーでは、「コーヒーはただの飲み物ではなく、幸せとともにあるもの」と考えています。飲み物を売っているのではなく、幸せを売っている。そして自分が幸せでなければ、ひとに幸せを提供することはできない。だから社員が幸せでなくてはならない。

経営者は、自社の事業を進めていくうえで選択を迫られることが多々あります。そんなとき、佐藤さんは「儲かる方」ではなく「ワクワクできる方」を選んできたそうです。そして今後もそれを続けていきたいとも。それが社員が幸せに仕事を楽しめることや誇りにつながっているといいます。

また、コーヒーを飲むという幸せについても熱く語ってくれました。

「考えてみてください。一日の始まる朝、恋人と過ごす時間、一息入れる時間…。コーヒーのある瞬間は、すべてポジティブなんです。やけ食いややけ酒はあってもやけコーヒーはない。コーヒーのあるハッピーシーンが世界に溢れてほしい、そう思っています」

「コーヒーを淹れる瞬間にも幸せがあります。手軽に楽しめるドリップコーヒーやリキッドタイプのコーヒーも確かに大切です。でもうちのコーヒーに限らず、ぜひレギュラーコーヒーで幸せを感じてほしいと思います。ゆっくりした時間を楽しんでほしい」

確かに時間がないとき・余裕がないときは、「インスタントコーヒーでいいか」と思ってしまいます。

「そうなんです。コーヒーを淹れるシーンが増えるということは、それだけ余裕のある・幸せなシーンが増えるということなんです」

地元・新潟への愛はもちろん、世界の幸せを願う気持ちをまっすぐに語ってくださいました。

今回ご紹介した企業
株式会社 鈴木コーヒー (新潟県長岡市)

創業50余年。新潟県長岡市と新潟市を中心に、コーヒー事業を展開しています。地元新潟への貢献を意識し、新潟愛に溢れた商品を多数開発。SDGsにも具体的に取り組み、社内の労働環境改善からフードロスの削減・自社製品のプラスチック使用削減・世界のコーヒー園を守る活動に至るまで、さまざまな取り組みを行っています。世界中の人々にコーヒーのある幸せな生活を送ってもらうべく、楽しみながら奮闘中。

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